認証企業事例紹介

情報革命の新たなステージで挑戦・成長し続ける企業をめざしてソフトバンク株式会社(東京都港区)

SBアットワーク株式会社
ピープルサポート&データソリューション事業部
ウェルネスサービス部 ヘルスケア推進課
兼 ソフトバンク株式会社コーポレート統括
Well-being推進室

長堀 美代子氏(左)

ソフトバンク株式会社
執行役員
コーポレート統括 人事本部 本部長
兼 総務本部 本部長
兼 Well-being 推進室 室長

源田 泰之氏(中)

ソフトバンク株式会社
コーポレート統括 人事本部
人事企画統括部 人事企画部
ワークスタイルデザイン課
兼 Well-being推進室

吉橋 由美氏(右)

ソフトバンク株式会社は、2018年に健康経営の推進を宣言。全社を挙げて健康経営を推進することで、社員一人一人が心身共に健康で常に活力あふれた集団であることを目指してきた。その取り組みが高く評価され、2024年3月に「DBJ健康格付」における最高ランクを取得。推進の中心を務めてきた3名の方に、その背景やポイント、今後の展望などをうかがった。

健康経営宣言、
そしてWell-being推進室の立ち上げ

まずは貴社が健康経営に取り組まれた理由や背景について、お聞かせください。

源田
弊社では2007年に産業医や保健師が常駐するウェルネスセンターをグループ会社であるSBアットワーク(株)に設置するなど、早くから社員の健康維持に取り組んできましたが、局所的な対応にとどまっていました。「人的資本」という言葉を耳にするようになったのは、ちょうど弊社が、今後のAI共存社会において不可欠となる「次世代社会インフラ」構築へと舵を切ろうとしていたときです。これから情報革命の新たなステージで挑戦・成長し続けるには、社員一人一人の生産性をより高め、成長を促す環境づくりが必須だと考えました。その鍵となるのが「健康」であり、それを経営課題として取り組むべきだとして行ったのが、2018年の「健康経営宣言」です。これが大きな起点となって、その後の全社的な活動へと広がっていきました。

具体的にはどのような取り組みをされているのでしょう?

源田
まずは専門部署として、CHRO(最高人事責任者)の直下に「Well-being推進室」を設置しました。今も吉橋さんたちが中心となって、計画の立案とその推進を担っています。次に「エンゲージメントサーベイ」を独自開発して、個人や組織の状態を定期的に測定できるようにしました。また、長堀さんが所属するSBアットワーク(株)にはメンタルヘルスなどをテーマにした動画学習サービスやストレスチェックシステムを、ヘルスケアテクノロジーズ(株)からはヘルスケアアプリ「HELPO」を提供してもらうなど、グループ会社とも密に連携しながら、ソフトバンクらしくデータやテクノロジーを活用した健康経営を行ってきました。ユニークなところでは、毎月開催する全社朝礼の前にヨガインストラクターの有資格者社員が実施する「ヨガ」をライブ配信。社長も参加して一緒に汗を流していますね。また、「HELPO」を活用して個人やチーム単位で歩数を競う「ウォーキングイベント」を年に2回開催。今や経営陣を含む2000人近い社員が参加する一大イベントとなっています。

ボトムアップの活動が経営陣を動かし、応援団を増やす

それらはトップダウンで進めてこられたのでしょうか?

源田
いえ。宣言もその後の施策も、吉橋さんや長堀さんたち現場のメンバーが中心になって推進してきたものです。彼女たちのチャレンジの積み重ねが経営陣を動かし、支持者や賛同者を増やしてきたのだと思います。
吉橋
そこはもう、“執念”でした(笑)。押し付けではうまくいかないと思っていたので、とにかく“自発的に”動いてもらうことを重視しました。「なんか面白いことやってるな」というのを地道に続けて、少しずつ応援団を増やしてきた感じです。ヨガインストラクターもそうですし、社員が悩み相談に応える「ピアサポーター制度」もすべてボランティア。会社が大きいと全体へ行き渡らせるのに時間はかかりますが、人のリソースが大きい分できることもたくさんあるのだと実感しています。そして、喜んで巻き込まれる人たちがいるのがソフトバンクらしいなと思います。
長堀
私も巻き込まれた一人でしょうか(笑)。当初は産業保健スタッフとして加わったのですが、今ではWell-being推進室のメンバーとしてみなさんと一緒に様々な施策に主体的に関わらせて頂いています。特にこの数年は、データ解析の部署などの協力も得ながら、本人の同意を得た上で定期健康診断結果や健康意識調査の回答などのさまざまなデータを活用し、効果測定や課題の抽出などを積極的に進めているところです。

社員の健康が、家族の幸福へとつながる

これまでの歩みをどのように捉えておられますか?

源田
今回このような格付けを頂きましたし、「健康経営銘柄」に2年連続で選ばれるなど、社外で高い評価を得られていることを大変光栄に思います。喫煙率のさらなる低減などまだまだ課題もありますが、着実に施策の成果が上がっていると手応えを感じています。「健康経営」が企業成長の重要基盤だと位置づけられるようになって、私たちの取り組みが社内でもはや当たり前のものになったことが、何より嬉しいですね。
吉橋
社外評価が高まればさらに社員からの信頼も高まるので、とても良い循環になっていると思います。当初は5人程度で始めた健康経営の取り組みも、現在は専門部署を立ち上げWell-being推進室となり、できることも増えましたし、やりたいことも増えていく一方です。健康診断の受診率が5年連続100%を達成したのは、大きな自信になりました。以前ある社員の方から「健康診断で病気が見つかったので、明日手術します。何度も未受診督促をしてくれて本当にありがとうございました。」というメッセージを頂いたことがあります。私たちは、ただ単に法律で義務付けられているから実施しているのではなく、健康の第一歩は「自分の身体の状態を良く知ること」ということを、社員に強く意識してもらうために取り組んでいるんだ、ということを再確認しました。
長堀
同感です。社員だけでなくそのご家族の幸せにも貢献する取り組みだからこそ、望まない受動喫煙をゼロにするために、課題となっている「喫煙率低減」には根気強く取り組もうと思っています。

進化し続ける「健康経営」をめざして

最後に、今後の展開や目標についてお聞かせください。

長堀
ようやく社員が「健康」というテーマを実感し始めたところですので、まだ実感できていない社員がゼロになるまで、頑張っていきたいと思います。
吉橋
私たちは常にNo.1をめざす会社なので、「ソフトバンクにいれば健康になる」と言われるくらい突き詰めたいですね。
源田
テクノロジーの活用をさらに本格化させたいと思っています。まだアイデアベースですが、睡眠や喫煙といった生活データと健康診断などのフィジカルデータを一元管理して、社員一人一人が健康状態の改善に行動できるような仕組みをつくりたいと思っています。あとウェルビーイングの可視化にも挑戦したい。フィジカルに比べてメンタルはどうしても具体的な目標・計画が立てづらいので、そこを突破したいなと考えています。進化し続ける「健康経営」を目指します。

(聞き手:サステナブルソリューション部長 木村 晋)
※役職等は取材当時(2024年5月)のものです。